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僕には学生時代から約10年交際していた恋人がいました。彼女とは高校も大学も同じで、同じ会社に就職。お互いはっきりと言葉にはしないものの、「このまま結婚するのだろう」と思っていました。
そんなある日、僕に地方支店への異動辞令が出ます。タイミングを同じくして、彼女との関係も思わぬ形で終わりを迎えることになってしまい……。
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新卒で入った会社で営業職として働き始めて4年目。社内には同年代の社員も多く、忙しいながらも充実した毎日を送っていました。
そんなある日、上司に呼び出され、近いうちに異動の辞令が出ることを告げられました。
異動先は、とある地方支店。本社からは飛行機で移動する距離にあり、これまで縁のなかった土地でした。
突然の話に戸惑いながらも、頭に浮かんだのは彼女のこと。このまま遠距離になるのか――考えがまとまらないまま、「わかりました」と答えるしかありませんでした。
異動の話は、結局彼女にきちんと伝えられないまま、正式な辞令が出てしまいました。
辞令が出た日の夕方、会社のチャットに彼女から「今夜、少し会える?」と、メッセージが届きました。
彼女にどう話をしよう。いっそのこと「ついてきてほしい」と伝えるべきか――そんなことを考えながら、仕事終わりに指定された場所へ向かいました。
しかし、そこにいたのは彼女だけではありませんでした。彼女の隣に立っていたのは、同じ会社で働く僕の後輩。
状況が飲み込めないままの僕に、彼女はためらいもなく「ごめん、あなたとは別れたい。彼と付き合うことにしたの」と言いました。
さらに後輩も軽い口調で「先輩、左遷されたんすねw 彼女のことは僕に任せてください」と続けます。
僕は何も言い返すことができず、ただ立ち尽くすばかり。10年という時間が、たった一瞬で終わってしまったのです。
異動先では、仕事に打ち込む日々が続いていました。恋愛のことはできるだけ考えないようにしていた僕を、何かと気にかけてくれる人がいました。同じ支店で働く2つ年上の女性・A子さんです。
自然にランチに誘ってくれたり、差し入れをくれたり――慣れない環境の中で必死だった僕は、その気づかいに何度も救われました。
ある日の仕事終わり、A子さんから「少し飲みに行きませんか?」と誘われました。
あまりお酒が強そうな印象はなかったのですが、いざ飲み始めると、彼女は想像以上のペースでグラスを空けていきます。
「明日も仕事ですし、そんなに飲みすぎないほうがいいんじゃ……」そう声をかけたときでした。
彼女はふっと笑って、まっすぐ僕を見つめながら言いました。
「好きです。付き合ってください」
酔っている勢いで言っているだけだろうと思い、「またまた、冗談きついですよ」と軽く受け流しましたが、彼女はそれ以上何も言わず、ただ静かにグラスを置きました。
そして帰り際、彼女がぽつりと「あなたのこと、ずっと気になってたんだから」とつぶやいたのを、僕は聞き逃しませんでした。
数日後、仕事で過去の資料を確認していたときのことです。担当者欄に見覚えのある名前を見つけました。――A子さんでした。
僕が入社した当時、本社の経理部にいた社員の名前でした。
当時は新人で、自分の業務を覚えることで精いっぱいだったこともあり、他部署の社員の顔や名前まで意識する余裕はありませんでした。彼女のことも、まったく覚えていなかったのです。
後日その話をすると、A子さんは少し照れたように笑いながら教えてくれました。
新人ながら必死に仕事に向き合っている姿を見て、気になる存在になっていたこと。そしてA子さんは約2年前にこの支店へ異動となり、まさかここで再会できるとは思っていなかったこと。
さらに彼女は、少し声をひそめてこう続けます。
「部長の話を小耳にはさんだんですけど、この支店って、期待されている人が集められてるらしいですよ」
てっきり自分は左遷されたものだと思い込んでいたので、その言葉で少しだけ前を向けた気がしました。
そして別れ際、彼女は改めてこう伝えてくれました。
「この前は突然ごめんなさい。でも、あのとき言ったこと、本気なので……少し考えてもらえたらうれしいです」

元カノとの別れを完全に吹っ切れたわけではありません。それでも仕事に向き合いながら、少しずつ前に進めているのは、A子さんの存在があったからだと思います。
これからのことは、まだわかりません。
ただ、仕事も、そしてもう一度誰かと向き合うことも――あらためて大事に考えていきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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