
義母&義父とひとつ屋根の下に暮らす。私が選んだのはふたりきりの新婚生活ではなく、義実家同居という昔ながらのかたちでした。時代に逆行するかのように、結婚と同時に4人暮らしを始めた私たちの事情とは……。
家賃からの解放
夫は次男で、しかも3きょうだいの末っ子。しきたりにうとい私でも、長男が実家を守る的なことは聞いたことがあるわけですが、何故、長男を差し置いて、私たちが実家住まい担当になったかといえば、ズバリ”貧乏だから”!
義母いわく「お姉ちゃんとお兄ちゃんが結婚したとき、家を買うのにお金を少し出してあげたのね。でも、あの子(夫のこと)、甲斐性なしで申し訳ないから、あなたたちにはこの家をあげちゃおうと思って」とのこと。
これに私が、一も二もなく大賛成した理由がありました。
「家族」にあこがれて
実は、私には複雑な事情によって家族がありませんでした。初めて義実家に挨拶に来たときの衝撃は忘れられません。
まずは当たり前のように「おかえり」というお義母さんに、これまた当たり前のように「ただいま」と返す彼氏(夫)。この3秒足らずのやりとりに、当たり前ながら親子なんだなぁ、とグッときました。
また、通されたリビングには使い古された食器棚がどしんと構え、ここに暮らした家族それぞれの趣味が点在して統一感がありません。みんなが好き勝手モノを持ちこんで、気持ちの良い場所に置いているみたい。そんなことにも私は、「ああ、ここはみんなの家なんだ」と感じました。
使い古されたソファに思いきり寝転がる夫はとても気持ちよさそうで、家具店の展示みたいに、整えられた部屋しか見たことがなかった私は、このときはじめて「落ち着く」という気持ちがわかった気がしたのです。
経験したことのないぬくもりに、脳みそ置いてきぼり状態の私でしたが、家族愛がからからだった体には、しっかりと愛情が染みこんできて……。会って間もない義両親を前に、何故かぼろぼろと泣きながら、私は生い立ちと胸のうちをすべてぶっつけてしまいました。
たぬき寝入りを決めこむ夫のやさしさも、「うん、うん」とただ受け止めてくれる義両親の懐の深さも、そのなにもかもに、強烈な”家族っぽさ”を感じたのです。
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