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夫と私は9年前に出会いました。さまざまな思い出がありますが、中でも結婚を初めて意識した日のことは今でもはっきりと覚えています。お付き合いを始めて、比較的早い段階で結婚を意識したのは、夫のあるひと言がきっかけでした。
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私は、友人からの誘いで参加した街コンで夫と知り合いお付き合いを始めました。私にとって初めての彼氏ということもあり、付き合った当初はデートのたびに緊張していたものの、徐々にデートを楽しむ余裕が出てくるように。
そして、付き合って2カ月が経ったころに迎えた彼の誕生日。彼はあまり物欲がない人で、私も男性へのプレゼントは何を渡せばいいのかわからなかったので、友人に相談した結果マフラーを渡すことにしました。
また、日ごろお世話になっているお礼を伝えるために、手紙も一緒に渡すことにしたのです。今見たら笑ってしまうような恥ずかしい内容ですが、「いつもやさしくしてくれてありがとう。これからもよろしくね」ということを手紙に書きました。
自分なりに一生懸命書いた手紙ですが、彼に喜んでもらえるか少しだけ心配していました。
誕生日当日は、彼がひとり暮らしをしているアパートでお祝いすることになりました。
最初にマフラー、そのあとに手紙を渡しました。「付き合い始めて2カ月で手紙は少し重かったかな……」とドキドキしながら彼を見ると、なんと彼が静かに泣き始めたのです。
私が驚いて「どうしたの?」と聞くと、「マフラーはもちろんだけど、手紙をくれてとてもうれしい。あなたとはゆくゆくは結婚したいと思ってるから、こちらこそこれからもよろしくね」との返事が!
彼は、浮かれたり、一時の感情でそのような発言をするタイプではありません。「これからも」は、あくまで手紙の締めの言葉として使っただけだった私は正直、「え? 結婚? 2カ月で? そこまで深い意味はなかったんだけど」と少し混乱してしまいました。
もちろん、私の予想以上に手紙に感動してくれた彼にそんなことを言えるわけもなく、「喜んでもらえてよかった」と返すので精一杯でした。
彼のことはもちろん好きでしたが、付き合ったばかりということもあり、それまで結婚を意識したことはなかった私。
しかし、その日を境にふとした瞬間に彼との将来を想像するようになりました。家族連れを見かけると自分と彼にあてはめたり、デートの別れ際にも「結婚したらバイバイしなくて済むのにな」と考えたり。
単純な私は、「根拠はないけれど、彼と結婚したら毎日楽しそう」とまで思うようになりました。そして、お互いに結婚を意識すると、自然と「何歳で結婚したい?」「子どもは何人欲しい?」など結婚を見据えた会話も一気に増えていったのです。
定期的に、浮かれすぎていないかを自問自答しつつも、お互いの価値観や人となり、人生設計を確認したうえで、付き合って2年半記念日に入籍しました。
夫の予想外のひと言がきっかけで、結婚を意識し始めた私でしたが、今では結婚の意思を早い段階で明確に示してくれた夫には感謝しています。
そのときにあげたマフラーは、多少ほつれてはいるものの今でも大切に使ってくれています。夫を泣かせた手紙も保管はしていますが、若さゆえに書いた恥ずかしい文章のオンパレードなのできっと見返すことはないでしょう。今でも夫とは、「あのころはお互いに若くて単純だったよね」と付き合っていたころの話をしては笑い合う日々。これからも、たまには思い出話をしながら穏やかな日々を過ごしていきたいです。
著者/西山百々
イラスト/sawawa
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