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当時、婚約中の彼と電話をするのが日課だった私。ある日、彼が「これから会社の人たちと飲みに行く」と言うので、夕方に少しだけ話して電話を切りました。するとその後、彼からの連絡が数日ほど途絶えたのです。次に彼が電話をかけてきたのは、ある場所からで……。
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次に彼から電話がかかってきたのは「会社の人たちと飲み会に行く」と言われた3日後でした。彼に「実は今、病院に入院している」と報告を受けた私は、あまりに突然の出来事に心臓が飛び跳ねるほど驚きました。「どうして? 何があったの?」と尋ねると、3日前の飲み会のときに倒れてしまって救急車で運ばれたと言うのです。
アルコールを大量に摂取したわけではなく、たまたまそのときの体調がよくなかったようで、軽い肺炎を起こして入院したそう。幸いにも大事には至らなかったらしく、最初に「救急車で運ばれた」と報告されたときには本当に焦りましたが、「今はもう大丈夫だよ」と言われてホッとしました。
彼から電話をもらった翌日、お見舞いのために病院を訪れると、彼は大部屋に入院していました。彼の隣のベッドに入院している男性に軽くあいさつを済ませたあと、彼から改めて入院した経緯の説明が。そのあとは、病院から出られない彼に代わり、入院生活で必要なものを揃えるため、私は病院を出てショッピングモールへ買い物に出かけました。
買い物を終えた私が病室へ戻ると、彼は隣のベッドの男性と談笑していて、私も会話に混ざることに。すると、男性が彼が入院してきたときの様子を教えてくれたのですが……。男性によると、彼は意識があいまいで自分の年齢を聞かれて「7歳です」と答え、ずっと女性の名前を呼んでいたとのこと。男性は「相手が私でなかったら大変だから」と言い、彼が呼び続けていた女性の名前は明かしてくれません。
婚約中の身としてはとても気になりますが、彼のことは信用しているので深くは考えないことにしました。入院時に彼はお酒を飲んでいたし、普通の状態ではなかったとも思っていて、多めに見ている部分もあります。
彼の入院期間は2週間ほど。その間に私は何度かお見舞いに行きました。時には、病院の屋上に行って周りに誰もいない中でお互いに近況報告をしたり、退院後の生活について話したりすることも。病院のルールは詳しく知りませんが、療養中の身である彼はあまり外に長く出てはいけないようで、屋上で話す時間はいつも5分ほどでした。
そんななか、この日も私たちは病院の屋上で2人きりで話していたのですが……。彼が突然、私の手を握って「キスして」と言い出したのです!
ここはあくまでも公共の場ですし、屋上であまり人気がないとはいえ、このあと誰かが来る可能性も少なからずあります。それに病院という場所でキスをするなんて不謹慎と思い、私は彼の手を振り払って「退院後にね」と断りました。おそらくは冗談で言ったのだと思いますが、だとしても病院で「キスして」と言う彼には少し呆れてしまいました。
入院中で人肌恋しくなったのかもしれませんが……。すでに彼と婚約していて夫婦になることが決まっている私からすれば、なんだか先が思いやられる出来事でした。
毎日電話をくれる彼からの連絡が突然途絶え、数日後に入院していると報告されたときには本当に驚きました。お見舞いに行くと、彼の隣のベッドの男性患者さんから「女性の名前を何度も呼んでいた」と聞かされたり、屋上で彼からキスを求められたりと、彼との結婚を控えている状況で少しショックな思い出が重なった体験です。
もうすぐ彼と入籍するのですが、当時は入院中だったこともあり、彼は普通の状態ではなかったと考えて自分の心を納得させるようにしています。
著者/中山真希
イラスト/マメ美
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